嵐山邸宅 MAMA
嵐山でくつろぎの滞在ができる宿、「嵐山邸宅 MAMA」
山のふもと。川の流れがかすかに聞こえるその場所に、何度でも帰りたくなる場所があります。
かつて阪急電鉄の保養所として使われていたその建物は、2020年にモダンなホテル、レストランとして生まれ変わり、街のひとからも旅の人からも愛される「邸宅」となりました。
嵐山のよさ、それは、住まうように滞在してこそ分かるのかもしれません。
阪急嵐山駅から歩いて徒歩3分ほど。桂川のほうに向かって歩いていく。
門構えは旅館のようで、「儘」と書かれた暖簾が秋の風になびいていました。
小さな庭を抜けて建物に入ると、そこはおしゃれなイタリアンレストラン。地元のひと、若い方達で賑わっており、どのテーブルからも楽しそうな笑い声が聞こえてきました。
レストランを横目にチェックインを済ませると、奥に案内され、麻のカーテンをくぐるようにホテルエリアへいざ入ります。
驚いたのは、ホテルの空間へ入る時に最初に靴を脱ぐこと。部屋までの廊下は全て絨毯が引かれ、階段までふかふかです。
「家に帰ってきたように、くつろいでいただきたくて。」フロントのお兄さんはそう言って、お部屋まで案内してくれました。
今回宿泊したのは、「101 MAMA Premium Garden」というお部屋。ホテルで一番広いお庭と、小さな書斎が付いています。
落ち着いたトーンの中に木や石、和紙などの自然素材が潜んでおり、上品な雰囲気の中に個性も感じます。そして浴室はガラス張りでお庭に面している…!この開放感、朝入るのも気持ちいいに違いない。
書斎に本が置いてあったので、お部屋にあった緑茶を淹れてゆっくり読書をしてみました。感じたのは、その選書や、湯呑み一つさえ、丁寧にしつらえられているということ。単に高級だ、というのではなく、それらはちょうどよく洗練されているということ。
この言葉が合っているのか分からないけれど、MAMAのお部屋の空間には「人の気配」を感じます。個性がある。そして、宿の方は「十室十色」と表現されていたけれどまさにその通り、部屋によってもその雰囲気は変わるのです。
気になって、どんな感覚でお部屋をしつらえているのか、ホテルスタッフの方に聞いたら「『邸宅の主人』だったらどうするかな」ということを考えて作っているとのこと。確かにそれには宿の人の好み、こだわり、愛着が表れる。訪ねてきてくれた友人を、自分の好きなものでもてなそうとか、心地よくくつろいでもらいたいとか、そういう想いが細部に宿っていました。
空間から、もてなしが語りかけてくるようでした。
ディナーはもちろん、併設のレストラン「PIZZERIA儘」へ。
街にひらかれたレストランエリアは、賑わいに溢れています。天井の高い古民家風の造りを残したスペースと、厨房の活気が伝わってくるスペース。気取らない、でも気の利いた空間に、お酒も進みそうです。
どれを頼むか、メニューを眺めながらもすでに漂ってくる、香ばしいピザの香り。
ピザは九条ネギや賀茂茄子など、地元の食材を使ったものもあり、どれも美味しそうで悩ましい……。
私は季節メニューのすき焼き風ビスマルクピッツァをオーダーしました。ふかふか、もっちもちの生地の中毒性がたまりません。とろとろの黄身にジューシーなお肉を絡めて…もう永遠に食べていたい。
フルーツをたっぷり漬けたサングリアや、シェフおすすめの鴨肉のローストも絶品でした。食事だけでも何度もリピートしたくなる。こんなに美味しくて雰囲気も最高、それでいてカジュアルに楽しめる、こんなピッツェリアがあるなんて、京都の人たちは羨ましい。
たらふく食べて、ワインも飲んで、あとはお部屋で寝るだけ。お腹いっぱいのまま、ふわふわベッドにごろり。この瞬間がホテルの真髄なのでは…?と思うくらいこの罪な時間が好きです。美味しさの余韻に浸りながら夜を過ごします。
暗くなった庭へ出てみると、あたりはとてもしんとして、さっきの賑やかなディナーの高揚感だけが自分の身体の中にじんわり、残っていました。よく耳をすませば、桂川のそうそうと流れる音が聞こえてきます。
私は、人で溢れるような賑わいの昼の嵐山しか知らなかった。街が寝静まったあとは、庭で少し風にあたり、自然の気配を五感で感じることができる。夜の嵐山はこんなにも特別で、贅沢な静寂をくれるのか。
その「静寂」は朝も楽しむことができます。これもまた私の知らない嵐山のもう一つの顔でした。
私は朝、お部屋のあの開放的なお風呂に入るのを楽しみにしていたので、寝心地抜群のベッドに二度寝を誘われながらもなんとか石のお風呂にお湯を張り、バスタイムを満喫しました。
窓から見える庭の木々が、朝日に当たって輝いているように見える、素敵な朝でした。
湯上がりにお庭に出て緑茶を飲んだ、あの時間。木漏れ日が降り注ぐなかの、何も考えない贅沢なひととき。数分のことだったのに、心からの深い安らぎを感じました。
朝ごはんもレストランにて。朝は宿泊者だけなので、昨晩とはまた雰囲気も違い、ゆったりとした空間に感じます。
昨日はピザだったし朝も洋食かな?と思っていたらなんと和食!ちょこっとずつ盛られた副菜やお漬物、とろけるお豆腐、ここでも素材の味が生きている。
そして一番美味しかったのは、「鯛汁」!鰹節が入ったポットにお湯を入れて、鯛のお刺身にかけていただく。ドライトマトやレモンの酸味がアクセントになった、今まで食べたことのない一品。
ほっと落ち着く朝ごはんを食べながら、「なるほどここはホテルというより邸宅だ。」と改めて思ったのでした。
食事やお部屋、館内での滞在を通して、どこか「邸宅としての好み」が滲み出ている。それは儘の方達による、こだわりや愛着をもとに形作られているから。好みは普遍的なものではないからこそ、決まりすぎない余白の中に安らぎが生まれる。
仲の良い友人の家に行くように、自分自身を飾らずに、ありのままで過ごせる。また帰りたくなる、定宿にしたい場所でした。
邸宅の主人たちにさよならを言って、にぎわう嵐山を後にしました。
[執筆・撮影] ホテルみるぞー
プロフィール : ホテルみるぞー
【全てのホテルラバーへ。素晴らしいホテルで、特別なひと時を過ごせますように】との思いを胸に、ホテル業に勤める身としてサービスマンの目線も織り交ぜながら、実際にお邪魔したホテル・旅館での体験をSNSなどで愛を持ってレポートしている。
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